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北水会記念病院

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人工膝関節手術

安全で確実な手術を追及することはもちろんのこと、手術後の痛みを最小にすることを目標としています。① 筋肉を切らない手術、② 最新の痛み対策処置(関節周囲多剤注射)、③ ひざの血流遮断を行わない手技(駆血帯を使用しない手術)により痛みの低減を行ってきました。かつて行っていた方法と比較して患者さんの手術直後の痛みは格段に小さくなっています。

人工膝関節手術は非常によい治療法ですが、まだこの手術を行うほど膝の病状が悪くない患者さんにはリハビリや人工関節以外の手術をお勧めしています。ひざの痛みでお悩みの方は、ぜひご相談ください。

人工膝関節手術を知るための6つのポイント
  1. ひざ(膝)の構造はどのようになっているのですか?
  2. 人工膝関節手術の原因で、最も多いものは?
  3. 人工膝関節手術とはどのような手術ですか?
  4. どのような場合に人工膝関節手術は有効でしょうか?
  5. 人工膝関節手術に欠点はありますか?
  6. 医師紹介

1.ひざ(膝)の構造はどのようになっているのですか?

ひざは太ももの骨(大腿骨:だいたいこつ)とすねの骨(脛骨:けいこつ)の間の部分です。

図1は赤い四角で囲んだ部分のレントゲン写真です。このレントゲン写真の、上にある骨が大腿骨、下にある骨が脛骨です。これらの骨にはさまれた部分は『すき間』があいているように見えます。レントゲンでは写りませんが、このすき間の部分には軟骨(なんこつ)が存在し、ひざを痛みから守っています。

  • 図1 膝のレントゲン写真
  • 図2 軟骨

2. 人工膝関節手術の原因で、最も多いものは?

図3

ひざを痛みから守っている非常に重要な組織が軟骨です。軟骨がすり減り、骨に負担がかかって痛みが出ている状態を「変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)」と言います。

正常のレントゲン写真(図3 左)と変形性膝関節症のレントゲン写真(図3 右)を比べてみると、大腿骨と脛骨の間の『すき間』の広さに違いがあることがわかります。

ひざを痛みから守ってくれる軟骨がすり減ったことにより、ひざの痛みが出てきます。座った状態から立ち上がるときや、階段を降りるとき、歩いているときに痛みが出るのが特徴です。痛みの場所は膝の内側(足でいうと『おやゆび側』)や後ろ側に出ることが多いです。進行すると下肢全体のかたちが変化してきて、典型的にはO脚ぎみになってきます。逆にX脚ぎみになってくる患者さんもいらっしゃいます。

この軟骨がすり減ってしまった変形性膝関節症が、人工膝関節手術を受けられる患者さんの原因で最も多いものです。

ほかには、大腿骨内顆骨壊死症(だいたいこつないか・こつえししょう)、関節リウマチ、ひざの外傷(ケガのことです)などがあります。

3.人工膝関節手術とはどのような手術ですか?

いたんでしまった軟骨と骨をとり除き、その表面に人工関節を固定します。先ほど述べたように、ひざの痛みの原因で最も多いものは、軟骨がすり減ってしまいひざを痛みから守れなくなっている状態(変形性膝関節症)です。この痛みの原因をとり除き、痛みを感じない組織である人工関節に置き換えることによって、ひざの痛みをとります。

また、軟骨と骨をとり除く際に調整することによって、O脚やX脚の患者さんは下肢をまっすぐに矯正します。

4.どのような場合に人工膝関節手術は有効でしょうか?

人工膝関節のよいところは、ひざの痛みが良くなることです。
つまり、ひざの痛みによって困っている方にとって人工膝関節手術は有効です。

例を挙げると、

  • ① お店の仕事や農業の仕事がひざの痛みでうまくできない。もっと仕事はつづけたい。
  • ② 旅行や温泉が趣味であったが、ひざの痛みがあり不自由である。いっしょに行く友人や家族に迷惑をかけてしまいそうである。
  • ③ ひざの痛みがひどくなってきて、立ち仕事や買い物に行くのが制限される。近所のスーパーにも車で送ってもらわないとなかなか行けない。
  • ④ O脚ぎみであり、ひざの痛みもある。もっときれいに歩きたい。
  • ⑤ ゴルフ、ウォーキング、ゲートボールなどのスポーツを行ってきたが、最近はひざが痛くてうまくできない。
  • ⑥ 関節リウマチをわずらっており、ひざの痛みが強くなってきた。

といった方は、人工関節手術が非常に有効です。

人工関節手術により痛みが良くなり、ご自身の足でもう一度自由に歩けるようになる、ということは非常に素晴らしいことです。ひざの痛みが変わると生活が変わります

もちろん、手術を行わなくてもひざの痛みが改善するような患者さんには、手術以外の治療を優先して行います。ひざの痛みでお困りの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

後述のように人工関節には耐用年数があるため、60歳以上の年齢の方がより適していると考えます。ただし、病勢や患者さんの生活背景によってはより若い患者さんにも手術を行うことがあります。

5.人工膝関節手術に欠点はありますか?

人工膝関節手術は痛みをとる効果に優れる治療方法ですが、欠点も存在します。

ひとつは手術後に麻酔がさめたとき、強い痛みが存在することです。かつて、人工膝関節手術はすべての手術の中で最も麻酔がさめた後の痛みが強い、と言われていました。しかし、当院ではこの痛みを最小とすることを目的にさまざまな方法で対応を行い、特に手術後麻酔がさめた時からその翌朝にかけての最も痛みが強い時間帯の痛みを従来よりも大幅に改善しています。この方法は、米国の整形外科学術誌において結果を報告しています。

すべての手術と同様、人工膝関節手術にも合併症を起こす可能性があります。

特に重要なものに、「感染(人工関節に細菌が入ってしまうこと)」「出血」「深部静脈血栓症・肺塞栓症(エコノミークラス症候群)」があります。

感染について

中でも感染は人工関節手術の最も重要な合併症であり、当院では、①人工関節専用の手術室(クリーンルーム)で手術を行う、②手術前から細菌を殺す薬(抗生物質)の点滴を行う、③手術中に3リットルの洗浄液でひざ関節の中を洗浄する、といった対策を行っています。ただし、これらの対応を行っても、感染のリスクは完全にゼロにすることはできません。

出血について

人工関節手術では、輸血が必要となることがかつては少なからずありました。しかし、当院では手術後の出血量を低減する試みを行っており、現在は片膝の手術の場合は輸血が必要となることはごくまれです。自己血(じこけつ)輸血も必要ありません。

両方のひざを同じ日に同時に手術を行う患者さんの場合は、自己血(自分の血液を献血しておき、手術のときにそれを輸血する)が必要になります。前述のように当院では出血量の低減する試みにより、両膝同時手術の場合にも、自己血の他に同種血(どうしゅけつ:献血で集めた他のひとの血液)が必要となることはごくまれです。ただし、手術前から貧血がある患者さんの場合は、安全を最優先してはじめから同種血の輸血を行うことがあります。

深部静脈血栓症・肺塞栓症について

深部静脈血栓症・肺塞栓症は、エコノミークラス症候群と言う呼び名で知られているものです。エコノミークラスは飛行機の一番せまい席の名称です。
指先を切って出血したときに、水道の水で流していると出血が止まりませんが、ガーゼなどでグッと押さえていると(血液が流れないようにすると)カサブタができて出血は止まります。エコノミークラスの席に座っているときのように、せまいところにジッとしているときも血液の流れが悪くなりますので、血管の中でカサブタのように血液が固まってしまうことがあります(血栓:けっせん)。これが深部静脈血栓症です。

麻酔がかかっている手術中は、エコノミークラスの席でジッとしているときと同じように足を自分で動かすことがありません。このため、高位脛骨骨切り術 のみならず、すべての手術(外科手術、婦人科手術、泌尿器科手術など)でも起きうる合併症です。当院では、弾性包帯やフットポンプによる予防、血液検査やエコー検査の実施による早期発見に努めています。

人工関節には耐用年数があります。

最近のテクノロジーや手術方法の進歩によって、手術から15年経ったあとも95%以上の人工関節が問題なく経過しています。逆に5%以下とはいえ、残念ながら再手術が必要となる患者さんもいます。これは、骨に固着していた人工関節が経年的にゆるんできてしまったことなどが原因です。

この人工関節のゆるみを早期に発見するため、人工関節手術を受けた患者さんは、手術後も1年に1度は外来を受診してもらいレントゲン写真を撮影して評価を行います。もしも以前人工関節手術を受けて定期的にレントゲン写真を撮影していない方がいらっしゃいましたら、手術をしてもらった医療機関や医師にみてもらうことをお勧めします。医療機関が遠方で受診できないような場合は、お気軽に当センターの外来を受診してください。

また、前述の細菌感染などの合併症によって、手術後の早い時期に再置換が必要となる患者さんもいらっしゃいます。

6. 医師紹介

塚田 幸行(つかだ さちゆき)

水戸人工膝関節センター センター長
医学博士 / 日本整形外科学会専門医

安全で確実な手術を追及することはもちろんのこと、手術後の痛みを最小にすることを目標としています。

① 筋肉を切らない手術
② 最新の痛み対策処置(関節周囲多剤注射)
③ ひざの血流遮断を行わない手技(駆血帯を使用しない手術)

上記の方法により、痛みの低減を行ってきました。この方法で行った私自身の人工膝関節手術の執刀数は2013-14の2年間でおよそ300例ですが、かつて行っていた方法と比較して患者さんの手術直後の痛みは格段に小さくなっています。 人工膝関節手術は非常によい治療法ですが、まだこの手術を行うほど膝の病状が悪くない患者さんにはリハビリや人工関節以外の手術をお勧めしています。ひざの痛みでお悩みの方は、ぜひご相談ください。

診察曜日:水曜日、金曜日、土曜日

手術症例数(執刀症例のみ、助手を含まない)

人工膝関節全置換術 951関節
人工股関節全置換術 92関節

経歴

平成16年 日本医科大学 卒業
     亀田総合病院臨床研修医・整形外科
平成20年 新潟中央病院整形外科
平成22年 川口工業総合病院整形外科
平成24年 猫山宮尾病院整形外科
平成26年 聖路加国際病院整形外科
平成27年 北水会記念病院水戸人工膝関節センター

受賞歴

平成27年 日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会(JOSKAS)
     Outstanding Young Investigator Award

論文

英語論文(筆頭著者が塚田の公表論文)

Impact of soft tissue imbalance on knee flexion angle after posterior stabilized total knee arthroplasty.
Tsukada S, T Fujii, Wakui M.
J Arthroplasty 2017, in press

Combined intravenous and intra-articular tranexamic acid in simultaneous bilateral total knee arthroplasty without tourniquet use.
Tsukada S, Wakui M.
JBJS Open Access 2017, in press

Is overcorrection preferable for repair of degenerated articular cartilage after open-wedge high tibial osteotomy?
Tsukada S, Wakui M.
Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc. 2017

The impact of including corticosteroid in a periarticular injection for pain control after total knee arthroplasty: a double-blind randomised controlled trial.
Tsukada S, Wakui M, Hoshino A.
Bone Joint J. 2016

A case series of total hip arthroplasty using cementless hip stem customized for patients of a specific race: 10- to 15-year results.
Tsukada S, Wakui M.
J Arthroplasty. 2016

Three-dimensional computed tomographic analysis for comminution of pertrochanteric femoral fracture: comminuted anterior cortex as a predictor of cutting out.
Tsukada S, Wakui M, Yoshizawa H, Miyao M, Honma T.
Open Orthop J. 2016

Pain control after simultaneous bilateral total knee arthroplasty: a randomized controlled trial comparing periarticular injection and epidural analgesia.
Tsukada S, Wakui M, Hoshino A.
JBJS Am. 2015

Lower Dislocation Rate Following Total Hip Arthroplasty via Direct Anterior Approach than via Posterior Approach: Five-Year-Average Follow-Up Results.
Tsukada S, Wakui M.
Open Orthop J. 2015

Lower Dislocation Rate Following Total Hip Arthroplasty via Direct Anterior Approach than via Posterior Approach: Five-Year-Avarage Follow-Up Results.
Tsukada S, Wakui M.
Open Orthop J. 2015

A Case Series of Total hip Arthroplasty Using Cementless Hip Stem Customized for Patients of a Specific Race: 10-to 15-Year Results.
Tsukuda S, Wakui M.
J Arthroplasty. 2015 (in press)

Is overcorrection preferable for repair of degenerated articular cartilage after open-wedge high tibial osteotomy?
Tsukada S, Wakui M.
Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc. 2015 (in press)

Postoperative epidural analgesia compared with intraoperative periarticular injection for pain control following total knee arthroplasty under spinal anesthesia: a randomized controlled trial.
Tsukada S, Wakui M, Hoshino A.
JBJS Am. 2014

Anatomic variations of the lateral intercondylar ridge: relationship to the anterior margin of the anterior cruciate ligament.
Tsukada S, Fujishiro H, Watanabe K, Nimura A, Mochizuki T, Mahakkanukrauh P, Yasuda K, Akita K.
Am J Sports Med. 2014

Metal block augmentation for bone defects of the medial tibia during primary total knee arthroplasty.
Tsukada S, Wakui M, Matsueda M.
J Orthop Surg Res. 2013

Locking versus non-locking neutralization plates for treatment of lateral malleolar fractures: a randomized controlled trial.
Tsukada S, Otsuji M, Shiozaki A, Yamamoto A, Komatsu S, Yoshimura H, Ikeda H, Hoshino A.
Int Orthop. 2013

Uncemented third-generation ceramic-on-ceramic total hip arthroplasty using metal acetabular shell with direct taper locking liner.
Tsukada S, Wakui M, Matsueda M.
Arch Orthop Trauma Surg. 2013

Intraoperative soft tissue tension and postoperative range of motion in posterior stabilized total knee arthroplasty.
Tsukada S, Hoshino A, Cho S, Ikeda H.
Arch Orthop Trauma Surg. 2013

Intramedullary screw fixation with bone autografting to treat proximal fifth metatarsal metaphyseal-diaphyseal fracture in athletes: a case series.
Tsukada S, Ikeda H, Seki Y, Shimaya M, Hoshino A, Niga S. Sports Med Arthrosc Rehabil Ther Technol. 2012

Postoperative stability on lateral radiographs in the surgical treatment of pertrochanteric hip fractures.
Tsukada S, Okumura G, Matsueda M.
Arch Orthop Trauma Surg. 2012

Bulk femoral head autograft without decortication in uncemented total hip arthroplasty: seven- to ten-year results.
Tsukada S, Wakui M.
J Arthroplasty. 2012

Decreased accuracy of acetabular cup placement for imageless navigation in obese patients.
Tsukada S, Wakui M.
J Orthop Sci. 2010

Minimally invasive intermuscular approach does not improve outcomes in bipolar hemiarthroplasty for femoral neck fracture.
Tsukada S, Wakui M.
J Orthop Sci. 2010

英語論文(責任著者が塚田の公表論文)

Intravenous acetaminophen in multimodal pain management for patients undergoing total knee arthroplasty: a randomized, double-blind, placebo-controlled trial.
Murata-Ooiwa M, Tsukada S, Wakui M
J Arthroplasty 2017, in press

Correlation of alpha angle between various radiographic projections and radial magnetic resonance imaging for cam deformity in femoral head-neck junction.
Saito M, Tsukada S, Yoshida K, Okada Y, Tasaki A.
Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc. 2017

Simultaneous bilateral transient osteoporosis of the hip without pregnancy.
Okada Y, Tsukada S, Saito M, Tasaki A.
Case Rep Orthop. 2016

Impact of postoperative compression dressing using polyethylene foam pad on the multimodal protocol for swelling control following total knee arthroplasty: a randomized controlled trial.
Kayamori S, Tsukada S, Sato M, Komata K, Isida Y, Wakui M.
Arthroplasty Today. 2016

Impact of active ankle movement frequency on velocity of lower limb venous flow following total hip arthroplasty.
Nakayama T, Tsukada S, Hiyama T, Yamada T, Hirasawa N.
Adv Orthop. 2016

日本語論文(筆頭著者が塚田の公表論文)

ストーブパイプ髄腔に対するテーパーウェッジ型ステムを用いた人工骨頭置換術の限界
塚田 幸行, 岩田 勇児, 佐藤 雄, 天羽 健太郎, 田崎 篤, 伊藤 幹人, 辻 荘市, 黒田 栄史, 井上 肇
臨床整形外科.2015

手術時間と人工膝関節置換術後深部感染
塚田 幸行, 星野 明穂, 島谷 雅之, 吉村 英哉, 望月 智之, 池田 浩夫
臨床整形外科.2013

変形性膝関節症に対する鏡視下デブリードマン 人工膝関節置換術施行例からの検討
塚田 幸行, 星野 明穂, 池田 浩夫, 吉村 英哉, 望月 智之, 島谷 雅之, 塩崎 彰, 高橋 徹, 小松 秀郎, 仲津留 恵日, 尾辻 正樹, 塩田 幹夫
日本人工関節学会誌.2012

人工膝関節置換術における抗生物質含有セメントの術後感染予防効果
塚田 幸行, 星野 明穂, 池田 浩夫, 塩崎 彰, 島谷 雅之, 林 将也, 望月 智之, 吉村 英哉
JOSKAS. 2012

人工膝関節置換術後大腿骨顆上骨折に対する逆行性髄内釘とロッキングプレートの比較
塚田 幸行, 松枝 宗則, 奥村 剛, 原 敬, 川越 得弘, 堀苑 英寛
整形・災害外科. 2012

大腿骨転子部骨折術後の内固定破綻に対するサルベージ手術
塚田 幸行, 奥村 剛, 菅原 留奈, 金城 忠克, 松枝 宗則, 山本 康行
整形・災害外科. 2011

前方進入法による大腿骨頸部骨折に対する人工骨頭置換術(後方進入法との比較)
塚田 幸行, 仲宗根 素子, 忽那 岳志, 山本 康行
骨折. 2010