骨粗しょう症外来
当院では骨粗しょう症を疑われる患者様に、まず3つの検査をお受けいただき、その方の病気や身体状況などを考慮した上で薬を選択し治療を行っております。
健康診断で骨粗しょう症を指摘された方をはじめ、腰椎の圧迫骨折や大腿骨近位部骨折などを罹患し、整形外科で治療を受けている方、リウマチや膠原病でステロイド治療をしている方も骨粗しょう症専門外来へ多くいらしております。最近では高血圧や糖尿病などの生活習慣病も骨粗しょう症の原因になることが分かってきており、そのような患者様の通院も増えております。
骨粗しょう症についての研究はここ数年でかなり進みました。治療薬も格段に増えております。まずは治療薬を選択し、定期的な検査で効果を判断しながら治療を継続することが大切です。
1.骨粗しょう症とは
骨の強度(強さ)が低下し、骨折しやすくなる病気です。
骨の強度には「骨密度」と「骨質」というものが関係しています。「骨密度」と「骨質」を改善することで、骨折を予防することが治療の目的になります。
骨粗しょう症の方は、現在日本に1300万人と言われていますが治療をしているのは2割程度です。症状がなく気付かないため、骨折をしてから分かるケースも多く、早めの対応が必要です。
骨粗しょう症の原因
慶應義塾大学病院KOMPASから許可を得て転載
大きく分けると「原発性骨粗しょう症」と「続発性骨粗しょう症」に分けられます。
原発性骨粗しょう症とは、主に加齢が原因で起こる骨粗しょう症です。女性の場合は閉経によって女性ホルモンが低下するため、骨粗しょう症が進行する方が多いです。思春期の過剰なダイエットなども関係することがあります。男性でもアルコールを沢山飲まれてきた方や、若い時に食生活が荒れていた方は注意が必要です。
続発性骨粗しょう症とは、他に原因がありそれによって骨粗しょう症が生じる場合に使われます。原因として多いのは、リウマチや膠原病、ステロイド薬の長期使用、糖尿病や脂質異常症、慢性肺疾患、慢性腎疾患を患っていることなどです。
骨粗しょう症によっておこる病気
骨粗しょう症に伴う骨折部位は特徴があります。
50歳から60歳では手首(橈骨)と背骨(胸腰椎)の骨折が多いです。
年齢が上がると、転倒したときに手が出せないことがあり、お尻から床に着くため足の付け根の骨折(大腿骨近位部骨折)が起こり易くなってきます。
骨粗しょう症専門外来で行う検査
レントゲン検査(胸腰椎2方向撮影)
骨密度検査(DXA検査)当院では放射線量の少ないPRODIGY(GE横河メディカルシステム製)で検査をしています。
血液検査(骨代謝マーカー検査を含む)
骨粗しょう症の治療
食事・運動・薬が3原則です。
食事は栄養をバランス良く摂取することが大切で、塩分や脂肪分の多い物は控えましょう。カルシウムだけでなく、ビタミンDやビタミンKを一緒に摂取するとよいでしょう。
運動は筋力をアップさせて転倒を予防すること、骨に負荷をかけて強くすることを目的に行います。
薬による治療は骨粗しょう症専門外来で行う検査結果をもとに、病気や身体状況を考慮して選択していきます。
骨粗しょう症治療薬の分類としては、大きく「骨吸収抑制薬」と「骨形成促進薬」に分けられ、その他に骨密度を上げるための補助的な薬を併用することもあります。薬の効果には個人差があり、副作用がでることもあります。外来で定期的な検査を行いながら続けていくことが必要です。
骨吸収抑制薬 … ビスホスホネート製剤、SERM製剤、抗RANKLモノクローナル抗体製剤、
ヒト化スクレロスチンモノクローナル抗体製剤
骨形成促進薬 … 副甲状腺ホルモン製剤、ヒト化スクレロスチンモノクローナル抗体製剤
補助的な薬 … ビタミンD3製剤、ビタミンK製剤など
2. 骨の話
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骨の構造
コラーゲン繊維が縦横に走り、その間をカルシウムやリン、マグネシウムなどのミネラル成分が埋めています。
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骨の形成
骨は日々、新陳代謝をしており、古い骨は壊され(骨吸収)、新しい骨が造られ(骨形成)ています。骨吸収には破骨細胞、骨形成には骨芽細胞が関与しています。
※閉経により女性ホルモンが減ると、破骨細胞の抑制が効かなくなるため、骨吸収が急激に進み骨粗しょう症になる方が増えます。
3. よくあるご質問
1. 骨粗しょう症になると、どんな症状があらわれるのですか?
骨粗しょう症だけでは症状はほとんどありませんが、進行すると些細なことで骨折をするリスクが高まりますので注意が必要です。特に転倒した際に、手首や背骨、足の付け根などに骨折することが多くなります。
2. 何歳くらいから気を付けたほうがいいですか?
女性の場合、閉経を機に骨密度が低下しますので、40歳を過ぎたら1度は骨密度検査を受けるとよいでしょう。50歳を過ぎたら1年に1度は骨密度検査を受けることをお勧めします。
3. 市販のカルシウム剤は有効ですか?
骨はカルシウムを材料にして造られますので摂取することは大切ですが、摂取しただけでは効果はほとんど期待できません。消化管からのカルシウムの吸収を助けるビタミンD3を摂取することや、さらには吸収したカルシウムを骨に吸着させて骨を造り保つことで初めて骨を強くすると言えるでしょう。
4. 痛みがなくても治療は続けるべきですか?
骨粗しょう症そのものではほとんど痛みはありませんが、それが原因で骨折すると痛みが生じます。骨折自体は治癒し、改善すれば痛みは徐々に減っていきますが、骨粗しょう症が改善しているわけではないので、次に骨折を起こす可能性はむしろ高くなります。ですから、一度骨折をした方は特に治療を継続したほうが良いでしょう。
5. 骨粗しょう症を予防することはできますか?
骨は20歳頃までに造られ骨密度のピークを迎えます。まずは成長期にバランスの取れた食事をし、日光を浴びて運動をすることが大切です。
歳をとってからの予防も同じように食事と運動が大切ですが、特に高血圧や糖尿病、脂質異常症、慢性腎臓疾患、慢性肺疾患などのある方は骨粗しょう症を悪化させることが分かってきていますので、アルコールやタバコなども控えることが大切です。
4. 医師紹介
平澤 彰子(ひらさわ あきこ)
診察曜日:木曜日 PM
学歴:聖マリアンナ医科大学 卒業
所属学会:日本内科学会、日本プライマリ・ケア連合学会、日本皮膚科学会、日本抗加齢医学界、日本人間ドック学会、日本乳癌検診学会
プライマリ・ケア認定医、検診マンモグラフィー読影認定医、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医