股関節疾患について

変形性股関節症とは?

様々な原因により、股関節の軟骨がすり減り、股関節の痛みが生じる病気です(図1)。高齢化が進む日本において股関節の痛みに悩まされている方々は増える一方でありますが、そのうち多くの方が治療どころか正確な診断も受けることができずに、半ばあきらめていることが多いのが現状です。

股関節疾患の大半を占める変形性股関節症は、日本人においては殆どが(全体の8割前後)臼蓋形成不全という先天性の骨盤形態異常によるもので、50代や60代になって初めてその異常を知らされる方も珍しくありません。股関節痛はこのような先天異常によるものが多いため、腰痛などと違いリハビリテーションや東洋医学で痛みが取れることは少なく、手術治療に踏み切ることが多いと考えられております。手術としては人工股関節全置換術(THA)が一般的な方法ですが、人工関節には寿命があるため(年齢や性別にもよりますが10年から20年と考えられております)、寿命が来たら再置換術を受けなければなりません。若年の方には外反骨切りや、寛骨臼蓋回転骨切り(RAO)、キアリ骨切りなど各種骨切りが勧められます。

当然のことながら、痛みを我慢したからと言って命にかかわることはありません。人工股関節全置換術であったらどんなに進行してからでも行うことができるため、あわてて治療する必要はありません。しかし、その痛みを我慢し続けることにより、腰痛が生じたり反対側の膝を痛めたりしてしまうこともあります。一度ひどく痛めてしまった膝や腰は、そののち股関節のみを治療しても治ることはありません。手術以外の治療法がないとはいえ、常に熟練した専門医に診察を受けるだけでも、その後の体のことを考えると大切です。

 変形性股関節症の痛みは必ずしも股関節に生じるとは限りません。放散痛と言いますが、膝や腰に痛みが来ることもよくあります。それゆえ前述の通り、腰痛や膝関節症と診断を受けてリハビリテーションや注射を受け続けている人も少なくありません。簡単な見分け方は、あぐらをかこうとした際に痛みが出るか否かです。該当する場合、股関節専門医の受診が勧められます。

図1 変形性股関節症では○部の軟骨が消失している

臼蓋形成不全とは?

 図2の通りで、先天的に骨盤の覆いが少ないために股関節の安定性が得られず、股関節の痛みを生じる状態です。筋力トレーニングなどで対処できることもありますが、程度によっては手術を要します。手術としては、RAO(寛骨臼回転骨切り術)(図3)、キアリ骨切り術(図4)、臼蓋形成術などを行うことになります。ただし、回復まで時間を要する術式であるため、社会的状況(仕事や家庭の状況)と照らし合わせる必要があります。

図2 臼蓋形成不全では○部の骨盤の覆いが足りなく骨頭を覆えていない

図3 RAOの手術前 / 手術後


図4 キアリ骨切り術の手術前 / 手術後

大腿骨頭壊死とは?

図5 大腿骨頭壊死

細かくは原因不明とされており、現在も厚生労働省が定める難治疾患です。

何らかの原因で大腿骨頚部の血流が阻害され、大腿骨頭に栄養が行かなくなり、壊死に陥り痛みを生じる病態です。アルコールを常習的に飲まれる方、ステロイド使用歴のある方に多いとされていますが、それ以外の方にも散見されており、詳細は分かっておりません。難治疾患の認定を得ると、治療費の補助が出ます(外傷性の壊死は除外されます)。

 壊死の範囲によって程度が分けられますが、程度が重ければ手術の適応となります。手術法としては、人工股関節全置換術(THA)、大腿骨頭回転骨切り術などがあります。

股関節リウマチとは?

関節リウマチとは、関節を中心とした全身の炎症疾患ですが、免疫異常によって生じるとされております。つまり、本来外部からのウイルスや細菌を攻撃するべき自分の免疫が、関節に含まるコラーゲン線維を攻撃してしまい、異常を引き起こすものです。

股関節に同様なことが生じるものが股関節リウマチです。原則股関節リウマチに対しては人工股関節全置換術(THA)しか治療の選択肢はありません。しかし、内服薬の副作用で手術前後の合併症が増えることもありますので、注意が必要です。

当院では関節リウマチ・膠原病科の医師とともに治療に当たり、合併症の予防に努めます。