もう一つの手術:骨切り術

O脚を矯正することにより、ひざの痛みも改善します

ひざの骨切り手術(こつきりしゅじゅつ、と読みます)は、人工膝関節置換術と同じように、変形性膝関節症の治療として行われる手術です。また、大腿骨内顆骨壊死症に対しても、非常に効果的な治療法です。

最も一般的に行われている骨切り術は、高位脛骨骨切り術(こういけいこつ・こつきりじゅつ)です。

ひざにかかる負荷は、主にひざの内側にかかります。下肢をまっすぐに(X脚ぎみに)矯正するように骨を切る(骨切りする)と負荷がひざの外側を中心にかかるようになります。

変形性膝関節症の患者さんの多くはひざの内側から軟骨がいたんでくるため、ひざの外側や膝蓋骨(しつがいこつ、おさらの骨)の軟骨があまりいたんでいない患者さんの場合は、人工膝関節置換術を行わなくても骨切り術で痛みが大幅に改善します。

一方で病勢が進行した変形性膝関節症の患者さんは、人工膝関節置換術を行わないと手術した後の痛みが残ってしまいます。

骨を切って矯正した後には金属性のプレートとスクリューで矯正した形を保持するように固定します。この金属は手術から1年ほど経って骨が十分に癒合した(くっついた)後に抜去します。

骨切り術の一番の利点は、骨切りは関節の近くで行いますが、関節そのものにはほとんど手術操作を行わないで済むことです(患者さんご自身の軟骨や半月板が保持されます)。手術後のひざの動きは、人工関節置換術よりも良好であることが多いです。

一方で、『骨を切って矯正して骨をまた癒合させる』という経過のため、骨が癒合するまではリハビリを慎重に行う必要があることが欠点です。入院期間も人工膝関節置換術より長くなります。また、ひざ前面のしびれや下肢のむくみが手術後6か月から1年ほど残ることが多いです。

高位脛骨骨切り術は、患者さんのひざがこの手術に適しているときは大変有効な治療法です。そのような患者さんで手術を希望される患者さんには、人工膝関節置換術と両方の説明を行い、患者さんといっしょに治療方法を決めています。