◎ 女性の泌尿器科手術
尿道スリング手術(TVT手術、TOT手術)
手術方法 膣の壁を1cmほど切開し、メッシュ状のテープを入れて尿道を支えます。
有効性 手術の有効性も高く、完全に治ってしまう人と、大幅に改善する人を合わせると改善率は90%程度です。
手術時間 約30分程度で、手術3日後には退院できます。
対象年齢 30代~90代まで手術は可能です。
TVTとTOTの違い
TVT(tension-free-vaginal tape)手術は1993年に開始されました。その低侵襲性、成功率の高さ、再発率の低さから、腹圧性尿失禁手術のスタンダードとなります。しかし、症例の蓄積につれて腸管穿孔や大血管の損傷などが報告され、より安全な術式としてTOT(trans-obturator tape)手術が考案されました。
TOT手術は骨盤内手術の既往のある方や放射線療法後の方にもほぼ安全に行えます。当院では第一選択としてTOT手術を行い、腹圧性尿失禁が残存した場合にはTVTを追加して行うことを提案しております。
腹腔鏡下仙骨膣固定術(LSC)について
腹腔鏡下仙骨腟固定術(Laparoscopic Sacral Colpopexy, LSC)は腹腔鏡下に骨盤臓器脱を治療する方法です。
欧米では骨盤臓器脱の治療のゴールドスタンダードとして以前から行われてきた術式ですが国内では先進医療として限られた施設でしか手術を受けることができませんでした。平成26年4月からは健康保険の適応となり、届け出をした施設では保険診療としてこの手術が行うことができるようになりました。
腹腔鏡を用いた仙骨膣固定術(LSC)治療の特徴
利点
- 膣をさわらないので性交渉に対して影響がほとんどない
- 痛みが非常に少なく出血が極めて少ない
- 再発が極めて少ない
- 股関節に病気があり、開脚制限があっても対応可能
欠点
- 手術時間がやや長い(約2.5時間)
◎ 男性の泌尿器科手術
HoLEP(ホルミウムレーザー前立腺核出術)
前立腺肥大症の手術
前立腺肥大症の手術は、切除(切る)・核出(くり抜く)・蒸散(蒸発させる)の3つがスタンダードな方法です。各々に一長一短はありますが、レーザーを用いた核出・蒸散が安全にかつ治療期間も比較的短時間で済むため、2000年代以降急速に普及してきました。
当院ではその中でも、HoLEPといわれるレーザーを用いた“核出術”を標準治療としております。
5年間で200件以上の手術を行っており、治療成績は良好です。再発による再治療の可能性が最も低い手術方法と言えます。
もちろん、状況に応じて従来通りの手術を施行することや、更なる低侵襲手術も選択が可能です。
HoLEPとは
HoLEPとは、ホルミウム・ヤグレーザーという種類のレーザーを利用した手術です。
当院では全身麻酔下で治療を行います。内視鏡を尿道から前立腺に挿入。レーザーファイバーを前立腺の内腺(前立腺の肥大する部分)と外腺(前立腺の外壁の部分)の境目に挿入します。レーザー光を照射しながら、肥大した内腺を外腺から核出(くり抜き)します。一旦くり抜いた前立腺を膀胱内に落とし、別の機器(モルセレーター)で細切・吸引しながら体外に排出します。
前立腺はミカンの構造に例えられます。ミカンの実を前立腺の内腺、皮を外腺と例え、実と皮の境界はミカンの如くきれいにはずせるということは昔から知られていました。その境界は、レーザーを用いることで安全に切り離すことが可能になり、内線(実)からの出血を極力抑えることができるようになりました。従来の手術は、例え通りで言えばミカンの実をそのまま削っていたことになり、果汁(=出血)がやや多くなる傾向がありましたが、この方法でほとんど解決されました。
HoLEPにより入院期間は短縮され、核出手術により長期においても再発はまず認めません。
(当院では本法による日帰り手術はお勧めしておりません。)
PUL(前立腺吊り上げ術)~新しい前立腺肥大症の治療~
022年4月からPUL(Urolift™)という新しい手術が前立腺肥大症に適応となりました。
この手術は、前立腺肥大症により狭くなってしまった尿道にインプラントを挿入して同部を拡張させるまったく新しい手術です。従来の手術(経尿道的切除・核出・蒸散の各手術)よりも体への負担が大幅に少なく、かつ手術時間も短いため、従来の手術が適応とされなかったケースでも施行できる可能性が広がりました。アメリカでは2013年から本術式は認可されており、手術に伴う合併症が少なく、性機能への影響がかなり少なく、治療成績も良好と謳われています。
わが国では、前提として従来手術が適応とならないケースのみ、本術式が適応されることになっております。よって、個々の患者様の手術適応に関しては、外来担当医とご相談の上で決定します。
※ 当院では同手術を2022年5月から開始しております。
PULの手術方法:以下の図のようにすべて尿道からの内視鏡で行います。
デリバリーデバイスを経尿道的に標的とする閉塞部位まで挿入します。
デリバリーシステムから送り出すニードルを介して留置される小型のインプラントによって、閉塞の原因となっている左右の前立腺葉を圧迫し、牽引します。
デリバリーシステムにはインプラント 1個が装填されており、ひとりの患者さんに対して 通常4~6個のインプラントを留置します1。
この治療方法で治療後に期待できること
- 早期の症状緩和と回復が得られています1,2
- 術後射精機能障害または勃起障害は、一過性の症状があっても消失し、新規発症はありませんでした2
- これまでの前立腺肥大症の治療の中でも術後カテーテル挿入率が低いです3
- これまでの前立腺肥大症の治療の中でも前立腺の組織に壊滅的な損傷を与える可能性が低いです
- Roehrborn, J Urology 2013
- Shore, Can J Urol 2014
- Shore Can J Urol 2014
◎ 結石の手術
経尿道的尿路結石手術(r-TUL、f-TUL)
手術方法 硬性軟性の細径の尿管鏡やレーザーファイバーを用いて、結石を砕石する方法。当院では細径の硬性鏡と、可動性の増した軟性尿管鏡(URF-V2:オリンパス社)とホルミウムレーザー(バーサパルスパワースイート:ルミナス社)を使用したTULを導入しています。
有効性 最新の機器を用いることで、結石破砕と摘出の安全性と確実性が向上し、腎臓内部の結石まで砕石し摘出できるようになりました。
手術時間 麻酔を含めて1~2時間程度です。
画像提供:ボストン・サイエンティフィックジャパン株式会社
ESWLとの違い
ESWLはレントゲンで結石に衝撃波の焦点を合わせて、衝撃波を当てることで結石を破砕する方法です。これは入院期間も短い利点はありますが、結石が破砕される保証はなく、細かく破砕された結石が体外に排出されるまでに疼痛や発熱などの症状を呈することもあります。一方、TULは入院し、麻酔をかけた状態で内視鏡を挿入して、結石をモニターで見ながら破砕する方法です。これはESWLに比べると入院期間を要しますが、直接見ながら結石を破砕するので砕石効果を確認することができ、また状況によっては破砕した結石を直接体外に取り出すことができます。
◎ 男性の泌尿器科手術
その他の手術を要する泌尿器疾患
- 膀胱がん
- 経尿道的手術
(TUR-BT)
- 陰嚢内容の手術
- 陰嚢水瘤や精液瘤
など
- 陰茎の手術
- 美容目的はお受けし
ておりません
- 内視鏡(経尿道的)を
要する手術 - 尿道狭窄や尿管狭窄
など
- その他の
泌尿器手術 - 施行できないものも
ありますので、
ご相談ください