泌尿器科の疾患について

泌尿器疾患全般に渡って診療を行っております。
当科に関連した気になる症状があれば、まずは遠慮なくご相談ください。
主に以下の疾患を取り扱いますが、特に前立腺疾患、女性泌尿器科領域の治療に注力致します。

  1. 前立腺肥大症(薬物治療~手術治療・術後管理)
  2. 女性の骨盤臓器脱や尿失禁
  3. 男女・年齢を問わず、多様な原因での下部尿路症状(LUTS)、過活動膀胱(OAB)、切迫性尿失禁(UUI)
  4. 尿路結石症(腎・尿管・膀胱結石)の管理や内視鏡手術
  5. その他の手術的治療を要する様々な泌尿器疾患
  6. 泌尿器悪性腫瘍の診断・治療相談・管理・手術治療 ※ 臓器摘出を中心とした大手術や化学療法・放射線治療などの選択を要するケースは当院では困難のため、然るべき医療施設との連携にて対応致します。
  7. その他の泌尿器疾患のご相談

以上のどの疾患においても、各種疾患の治療ガイドラインや標準的な治療に則った選択を基本とします。

前立腺肥大症

概説

その名の通り前立腺が肥大し、尿道を圧迫することによって尿に関わる種々の症状を呈します。
海外データですが、50代で30%、60代で60%、70代以上では70%以上の男性の前立腺が肥大するといわれます。もちろん、全員に何らかの症状が起きるわけではありません。大きな前立腺肥大症であっても治療を要さない場合もあれば、逆に前立腺肥大症がなくても尿のトラブルが起きる場合もあります。特に我が国のような長寿社会においては、一般的に60代以上の男性の2人に1人は尿のトラブルを抱えることになると考えられています。

症状

一般的には“尿が出づらくなる=排尿異常”とイメージされやすいですが、“尿の我慢がきかない”“尿が近い”といった“畜尿異常”を主に自覚される場合も多いです。あるいは病状が進んでいくと、両方の症状となる場合もあります。これらの症状が適切に治療されなかった場合、ある日突然に尿が出なくなること(急性尿閉)や、自覚なく段々と残尿量が増えることがあり、最悪は膀胱の機能までが大きく損なわれることもあります。そうなってしまってからでは、前立腺肥大症の薬物治療や手術治療を行っても、その結果が伴わなくなる場合があります。
まずは、現在のご自身の尿が日々の生活の障害になっていないかどうかを確認し、少しでも気になることがあれば、前立腺の検査を受けられることをお勧めします。

検査

超音波・尿流測定検査・残尿量測定を基本とします。痛みを伴う検査はありません。
併せて、50代以上の方は前立腺がんの検診項目であるPSA(前立腺特異抗原)採血が推奨されます。

治療

治療開始初期は、前立腺肥大症の状況に合わせた薬物治療を基本としますが、適応となる場合には積極的に手術を行います。

手術適応となる条件
①薬物治療が奏功しない
②尿閉や残尿過多
③血尿が頻回
④尿路感染症を併発
⑤膀胱結石の発生
⑥腎機能低下の合併 などがあります。

もちろん、薬物治療を中止したい場合にも、手術を行うことがあります。
手術は原則内視鏡手術(経尿道的手術)で、当院では標準手術としてホルミウム・ヤグレーザーを用いた経尿道的前立腺核出術(HoLEP)を行います。このレーザーによる核出術は、切除術と並び既にスタンダードな方法として確立され、安全性も高く、治療成績も良好です。術後、比較的早期に通常の生活に戻ることも可能ですし、他の手術よりも将来的な再発リスクが極めて低いとされます。また、2022年4月より新しい手術方法である経尿道的前立腺吊り上げ術(PUL)が認可されました。これは、前立腺肥大により狭くなった前立腺部尿道に、インプラントを挿入して同部を拡張させる方法です。従来の手術が諸般の事情(年齢的・身体的・精神的な理由)で不適格とされた方でも、本手術は安全性が高く、かつ短時間で完了できるため施行可能です。当院ではこの方法を令和4年5月より導入・開始し、安全性と治療効果がよくバランスされている治療と考えています。
治療・手術の適応は担当医が判断しますので、ご興味がある場合は外来でご相談ください。

女性の骨盤内臓器脱や尿失禁

男女・年齢を問わず多様な原因での、下部尿路症状(LUTS)、過活動膀胱(OAB)、切迫性尿失禁(UUI)

排尿や畜尿に関する種々の症状を下部尿路症状(LUTS)と呼称します。
著しい長寿社会である日本において、LUTSに関する問題は人生の集大成の時期に多く出現します。
男性は既述の前立腺疾患が重要ですが、女性も過活動膀胱(OAB)やそれに付随する切迫性尿失禁(UUI)が今や他人ごとではない状況となっています。また、性差に関わらず、夜間頻尿は社会的な問題となっております。最近はこれらの症状に対応するように、薬物療法の選択肢も多様化し、生活指導や行動療法を合わせて、うまく症状をコントロールできる時代です。また、他臓器疾患(脳血管障害や脊髄疾患、糖尿病など)の合併症や、骨盤内臓器手術後(婦人科手術や消化器外科手術後)の合併症として生じる、排尿困難や頻尿といったトラブルもあります。
以上のような、尿に関してのお困りごとは、当科にご相談ください。

尿路結石症(腎結石・尿管結石・膀胱結石)

概説

日本国内の生涯罹患率は男性で約15%、女性で約7%とされ、ありふれた疾患です。世界的にも増加傾向にあります。そのため、結石による激烈な疼痛発作で救急受診する患者様は後を絶たず、適切な診断と治療を行う必要があります。時に重大な合併症を引き起こす場合もあり、結石保有者の定期的な観察は重要です。加えて、一旦治癒しても約5~10年のうちに半数の患者様が再発すること、一部に家族内発生(遺伝的要素)があること、肥満やそれに伴う生活習慣病との関連、地球温暖化による外気温上昇との関係も指摘されています。

尿路結石の部位別症状と治療適応

腎結石
腎臓内部にある結石はほとんど症状がありません。
微小な結石であれば経過観察も可能です。
しかし、放置したままで結石が増大した場合は、後に治療に難渋することとなり、多大な労力を要します。
よって自然排出されないサイズ(5-10㎜)以上は治療を考慮します。
尿管結石
尿管結石は疼痛を伴い易く、自然排出されないサイズ(10㎜以上)の場合は積極的な治療です。
あるいは、サイズによらず1か月以上移動しない場合は手術治療が推奨されます。
膀胱結石
膀胱結石は慢性的な排尿障害や尿路感染症に起因することが多く、自然排出は望めないため手術が推奨されます。また、尿道カテーテル管理中に発生する場合も多く、トラブルを生じれば適応です。

※いずれの部位でも感染症を合併した場合は、治療適応となることが多いです。

治療

腎・尿管・膀胱の各部位における結石の状況に応じて、①体外衝撃波結石破砕術(ESWL)、②経尿道的砕石術(TUL)、③経皮的腎砕石術(PNL)、②と③融合的手術(ECIRS)のいずれかが選択されます。当院はESWL装置がないため、内視鏡による砕石(TUL)が主体となります。この方法は、特に中~下部尿管や膀胱での第一選択とされますが、上部尿管や腎臓内(腎盂内)も、細径の軟性鏡による砕石(f-TUL)で治療をすることが可能です。これにより、一定の大きさまでの腎結石や複数個の腎結石にも効果をあげています。また、医療機器の進歩により、結石を砂状化(ダスティング)したり、抽石する(取り出す)ことも可能になりました。結石の状況にもよりますが、TULはESWLよりも短期間で結石を処理できる場合もあるといえます。但し、あまりに大きい腎結石はPNLやECIRSを行う方がよいです。いずれにしましても、結石の部位やサイズ、患者様のコンディションに合わせて、適切な治療方針をご提案します。

予防

結石が排出された場合は必ず成分分析をし、予防策を検討する必要があります。もちろん、すべての結石が予防可能ではありませんが(結石の多くは完全な予防が困難ですが)、生活指導や薬物治療による再発抑制を検討するために必要な情報です。結石の種類を問わず、共通していることは、水分をしっかり摂取(1日水分摂取量2Ⅼを目安)することです。併せて、尿成分や採血データなども検討しながら薬物治療・食事指導を行う場合もあります。

その他の手術を要する泌尿器疾患

泌尿器悪性腫瘍の治療相談や管理、手術治療

前立腺がん、膀胱がん、腎がんに代表される泌尿器科悪性疾患に関しての治療相談や保存期(症状の安定している時期)の管理はお受けすることが可能です。
当科医師は悪性疾患の経験も豊富ですので、気になることはご相談ください。
積極的な臓器摘出をはじめ、いわゆる集学的治療(放射線や化学療法など)は、然るべき医療機関と連携・相談して対応致します。

その他の泌尿器疾患

意外と多いものの見過ごされたり、放置されたりし易い以下の疾患も対応致します。