尿もれでお困りの方
「尿もれ」とひとことで言っても様々な症状があり治療方法も異なります。
まずはどんな自覚症状があるか確認してみましょう!
切迫性尿失禁とは?
膀胱が無意識の内に暴走して突然に尿意が襲い失禁する病態。膀胱の暴走は安静時よりは活動時に、かつ横になっているより立っている姿勢により多く発生する。そのため夜間にはその発生頻度が低くなる。
切迫性尿失禁の治療について
骨盤底筋体操(※1)、電気刺激療法(※2)、薬物療法(※3)で治療します。
腹圧性尿失禁はなぜ起こるのか?
尿道を支える筋肉が傷み、ゆるんでいるのが原因です。尿もれは、出産経験のない女性の場合、経験者が13%*なのに対し、出産経験のある女性の場合は50.4%*まで上がります。分娩回数の多い人ほど尿もれを起こしやすい傾向にあります。
*「出産経験と尿もれ」東玲子他 山口医学52:237,2003より
腹圧性尿失禁の治療について
下部尿路リハビリテーション(骨盤底筋体操(※1)、膀胱訓練(※4)、電気刺激療法(※2))、薬物療法(※3)、手術等で治療します。
薬物療法はβアドレナリン刺激薬、手術は尿道スリング手術(TVT手術、TOT手術)を採用しています。
過活動膀胱はなぜ起こるのか?
40歳以上の女性の10人に1人がかかっている*といわれる過活動膀胱。原因は主に神経系のトラブルと骨盤底筋のトラブルに分けられます。
神経系のトラブルとは、脳卒中や脊髄損傷の後遺症で、脳と膀胱の筋肉を結ぶ神経の回路に障害が起きた場合をいい、骨盤底筋のトラブルとは、出産や加齢によって、子宮・膀胱・尿道などを支えている骨盤底筋と呼ばれる筋肉が弱くなって起こる場合をいいます。これら以外にも、何らかの原因で膀胱の神経が過敏に働く場合や、原因が特定できない場合も多くみられます。
*「過活動膀胱の有病率」本間之夫他:日本排尿機能学会誌14(2):1,2003
過活動膀胱の治療について
行動療法(生活指導、膀胱訓練(※4)、骨盤底筋体操(※1))、薬物療法(※3)、電気刺激療法(※2)で治療します。
生活指導とは、「水分やカフェインを摂り過ぎない」「早めにトイレに行く」「トイレの場所を確認しておく」といった生活習慣の改善を指します。薬物療法は抗コリン薬、β3刺激薬を用います。
※1)骨盤底筋体操とは
膣と肛門を意識的に締めたり緩めたりする体操です。
仰向けに寝た状態や、這いつくばった姿勢、机に手をついた状態、イスに腰掛けた状態などで行います。
※2)電気刺激療法とは
骨盤底筋などに電気刺激を与える方法です。電気刺激を受けることで筋肉や神経の機能を向上させることが目的で、尿失禁や頻尿を改善させるだけでなく、骨盤臓器脱にも効果が認められています。
※3)薬物療法とは
β刺激薬:腹圧性尿失禁の軽症の方に有効です。腹圧に対し、尿道の抵抗を上げて尿がもれるのを防ぎます。
抗コリン薬:切迫性尿失禁、過活動膀胱に有効です。膀胱をリラックスさせることで膀胱の勝手な収縮を抑え、尿が溜まるのを促します。
Q1:薬は毎日飲まなければいけないのですか?
A1:毎日指示通りに飲むようにしてください。
Q2:抗コリン薬を飲むようになってから口の中が乾くのですが…
A2:抗コリン薬の副作用として口の中が乾くことがあります。医師に相談し、薬の量、飲む時間帯などを調節します。
※4)膀胱訓練とは
頻尿や尿意切迫感のある人が排尿をがまんする訓練。骨盤底筋体操を行いながらがまんすると副交感神経の働きを高め、効果が高まります。具体的には15分~60分単位で、少しずつがまんする間隔を延ばしていきます。目標は2~3時間がまんできる状態です。
下腹部の違和感でお困りの方
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骨盤臓器脱(POP)とは?
子宮・膀胱・直腸などの骨盤内の臓器が膣から下垂し、出てくる病気の総称です。以前は子宮脱、膀胱瘤、直腸瘤と呼ばれていました。
何が下がってくるの?
下がってくる臓器は膀胱が64%と一番多く、直腸が22%、子宮は14%と意外に少なくなっています。
骨盤臓器脱の原因
出産、閉経による女性ホルモンの低下(更年期)、肥満や便秘も骨盤臓器脱の原因になります。
骨盤臓器脱の検査方法
鎖膀胱造影検査、CT、MRI等を用いて行います。
骨盤臓器脱の治療方法
ホルモン療法:女性ホルモンを使用します。
膣内挿入器具(ペッサリー)(※1)
手術(TVM手術)による治療(唯一の根本的な治療です)
サポーター(フェミクション)(※2)
※1)膣内挿入器具(ペッサリー)
対症療法であり違和感、痛みを伴うことがあります。出血、感染などのリスクもあり、長期的な治療は難しいといえるでしょう。
ペッサリー療法
※2)サポーター(フェミクション)
下着状のサポーターと柔らかいクッションで下着感覚で身につけることができます。
クッション・ホルダー・サポーターの装着イメージ
(※実際の症例とは異なる場合がございます)
よくあるご質問
1. 骨盤臓器脱は多いのですか?
非常に多い病気です。スウェーデンの調査では出産経験者の44%に骨盤臓器脱が認められると報告されています。米国の調査では80歳までに9人に1人が骨盤臓器脱または尿失禁で治療が必要になるといわれています。
2. 放っておいたらどうなるの?
骨盤臓器脱に自然治癒はありません。下がった臓器は元の位置に自然に戻らないからです。いつかは治療が必要になります。
3. どうなったら受診したらいいの?
臓器が下がることで「困るなあ」「いやだなあ」「気持ち悪いなあ」と思うようになったら受診されるタイミングです。この病気は生活の質にかかわる病気ですので、患者さんの自覚症状が最も重要です。
4. 受診は婦人科に?泌尿器科に?
これまでは子宮をとるような手術をしていましたので産婦人科でみることがほとんどでした。現在は子宮をとらない手術ができるようになり、泌尿器科でも治療するようになりました。
5. 再発はしないのですか?
この術式は7 年程度のデータしかないので、長期成績は不明ですが、おそらく従来の方法と比べてかなり低くなることが予想されます。短期のデータでは再発率は5%以下といわれています。
6. その他の一般的な合併症についても教えてください?
出血、血腫、痛み、発熱、深部静脈血栓症、排尿困難などが起こりうる合併症です。従来法とくらべてこれらの頻度は大幅に減少しております。
7. 尿もれの治療も同時にできますか?
骨盤臓器脱と尿もれの治療を同時に行うかについては、議論がわかれるところです。症状や病態などで、ケース・バイ・ケースで判断しています。