よくあるご質問
1. 骨盤臓器脱は多いのですか?
非常に多い病気です。スウェーデンの調査では出産経験者の44%に骨盤臓器脱が認められると報告されています。米国の調査では80歳までに9人に1人が骨盤臓器脱または尿失禁で治療が必要になるといわれています。
2. 放っておいたらどうなるの?
骨盤臓器脱に自然治癒はありません。下がった臓器は元の位置に自然に戻らないからです。いつかは治療が必要になります。
3. どうなったら受診したらいいの?
臓器が下がることで「困るなあ」「いやだなあ」「気持ち悪いなあ」と思うようになったら受診されるタイミングです。この病気は生活の質にかかわる病気ですので、患者さんの自覚症状が最も重要です。
4. 受診は婦人科に?泌尿器科に?
これまでは子宮をとるような手術をしていましたので産婦人科でみることがほとんどでした。現在は子宮をとらない手術ができるようになり、泌尿器科でも治療するようになりました。
5. メッシュは溶けないのですか?
メッシュは一般の手術のときに、血管を縫うプローリンという糸を編んでつくっています。これは非吸収性で溶けない糸ですので、メッシュも溶けません。当然、手術でつかわれる糸なので、溶けなくても体に害を与えることはありません。
6. メッシュがどのようにして臓器を支えるのですか?
メッシュのまわりを患者さん自身の細胞がとりかこみ、人工の筋膜のようになることで、骨盤臓器を支えます。メッシュは溶けない素材のため、のびずに骨盤臓器を支えることができます。
7. メッシュはどこに固定するのですか?
メッシュにはアームといわれる部分があり、骨盤の中の靱帯を脚が貫くようにして固定します。 このアームは縫って固定するものではありません。メッシュは表面がざらざらしているため、メッシュの脚が靱帯の中を貫くことで固定されます。しかしながら、初めのうちは固定が十分でないので、術後1ヶ月程度は激しい運動をしないようにします。
8. 再発はしないのですか?
この術式は7 年程度のデータしかないので、長期成績は不明ですが、おそらく従来の方法と比べてかなり低くなることが予想されます。短期のデータでは再発率は5%以下といわれています。
9. 鼠径ヘルニアもメッシュ手術をすると聞いたのですが?
その通りです。もともと鼠径ヘルニアでは30 年以上前からメッシュ手術が行われていて、メッシュを使わない方法よりメッシュ手術の方が有効性も安全性も高いということが証明されています。骨盤臓器脱では、鼠径ヘルニアに使用するメッシュより軽くてしなやかなメッシュが使用されます。
10. メッシュ手術に特有の合併症ってあるのですか?
メッシュが傷口からでてくる膣びらんという合併症があります。頻度は1~5%程度といわれています。
11. その他の一般的な合併症についても教えてください?
出血、血腫、痛み、発熱、深部静脈血栓症、排尿困難などが起こりうる合併症です。従来法とくらべてこれらの頻度は大幅に減少しております。
12. 子宮はとらなくてはいけないの?
メッシュ手術は子宮をとる必要はありません。最近では子宮を取らない方が合併症も少ないというデータも出ています。
13. 以前子宮をとっていますがメッシュ手術はできますか?
メッシュ手術は以前に子宮をとられた方にも十分対応できます。そのような方には従来法ではかなり難しい手術でしたが、メッシュ手術では実施可能です。
14. 尿もれの治療も同時にできますか?
骨盤臓器脱と尿もれの治療を同時に行うかについては、議論がわかれるところです。症状や病態などで、ケース・バイ・ケースで判断しています。